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- 別冊ちゅらぼし日記 第4号 -

ブウィンディ原生国立公園 ゴリラトラッキング / Gorilla Tracking in Bwindi Impenetrable National Park #3

ゴリラトラッキングのいろは
  ゴリラに一目逢いたい!という気持ちと同時に、観光客が絶滅危惧種のゴリラを追いかけて観察するなんてことをしていいんだろうかという疑問も持っていた私たちは、ゴリラトラッキングについて学ぶべく、翌日レンジャーオフィスを訪れた。
そこでいろいろ訊いた内容をご紹介したい。
   
ゴリラのハビチュエーエーション(人間に馴れさせること)
   

マウンテンゴリラは世界で700頭あまりとなってしまっており、ウガンダ、ルワンダ、コンゴにまたがる熱帯雨林に住んでいる。そのうちブウィンディには約半分の300頭あまりがいるという。

ゴリラトラッキングを始めるにあたってまずやらなくてはいけないのが、ゴリラのハビチュエーション。人間が近づいてもストレスにならないよう、馴れさせるのである。

レンジャーが初めは200mくらい離れたところから観察を始めて、だんだん近づいていくようにする。もし近づきすぎて威嚇してきたりしたらもうちょっと距離を置くというのを繰り返し、そのレンジャーに馴れさせるのに約6ヶ月。
さらにそこから、いろいろな人が来ても大丈夫になるまでに6-12ヶ月かかり、そうなったらトラッキングの対象とする。

ブウィンディ国立公園ができたのは1991年と比較的新しく、その年からハビチュエーションを始めて1993年にトラッキングが行われるようになった。

現在はブウィンディ国立公園内に住むグループ28のうち、メインゲートから3グループ、南部で1グループ、さらにリサーチ用に1グループと計5グループが訪問可能である。訪れることのできる人間は1グループ8人までとされている。

   
マウンテンゴリラとゴリラをめぐる歴史
   

 

ゴリラがこんなにも減ってしまった理由には、熱帯雨林の伐採により住処を奪われた他、次のようなものがあるとか。

1 コンゴの一部の部族はゴリラを食用とするため、コンゴからやってきて猟をしたり、地元の人が獲ったゴリラをコンゴの人に売ったりということが行われていた。
2 先進国の人がペットとして連れて帰った。
3 国立公園になる前はこの森で伐採が行われていたが、地元の人にとってはゴリラは不吉な存在とされ、おとなしい草食動物であるにも関わらず、森で出会うと殺してしまった。

国立公園になってからも密猟は行われていたという。最近では2003年にも密猟の試みがあ ったが、事前に捕えられたとか。先進国の金持ちに雇われたらしい。こんなに動物保護が叫ばれている世の中でいまだにそんなことをする人が先進国にいるとは・・・ 悲しいことだ。

また、以前は違法なゴリラトラッキングも問題になっていた。限られたパーミットに世界中から人が殺到するため、パーミットを取れなかった人が現地の人を雇ってゴリラを見にいってしまうというものである。これまたお金にモノをいわせた心ない行動である。

そして、ブウィンディのゴリラトラッキングについては、もうひとつショッキングな事件があった。

1999年、ゴリラトラッキングをしに来た観光客とガイドが襲われ、殺されたというものである。
この背景にはマウンテンゴリラの住むこの森がコンゴ、ルワンダ、ウガンダ国境付近の非常に治安が不安定な地域だということがある。
どの国にとっても 金のなる木である「ゴリラトラッキング」ツーリズムにダメージを与えるためなのか、このような事件はコンゴでも起こっており、コンゴでのゴリラトラッキングはいまだ再開されていない。

事件後、ゴリラトラッキングの警備はより厳重なものになった。


事件のことを書いた碑
   
360USドルの使い道
   

2005年9月現在、ゴリラトラッキングをするためのパーミット(許可証)は360USドルである。ウガンダの物価からすれば破格。なぜこんなに高いのか。使い道に関してはこう説明があった。

  • 25%はブホマコミュニティ(ブウィンディ国立公園の入り口にある村)へ還元
    • ウガンダの奥地にあるブホマ。バナナとお茶をつくって自給自足に近い生活をしていたところに、ブウィンディが国立公園になったことで森の利用は制限され、ゴリラ効果で世界中から観光客が押し寄せるようになった。が、村自体には小さなお土産やとコミュニティキャンプがあるくらいで、ほとんどの観光客は通過するだけの村。お金があまり入ってこない。
    • 国立公園内の仕事は全てUWA(Uganda Wildlife Authority)に所属する人々に任されており、地元の人に雇用機会はないようだ。
    • すぐそばに観光客がものすごい高いお金を払うアトラクションがあるというのに、地元に何も還元されないのはおかしいと不満がつのり、実現したのがこの還元制度らしい。ただ、その額はレンジャーいわく、現在はパーミット(360USドル)の25%らしいが、コミュニティの人いわく、入場料(US20ドル)の20%だとか、コミュニティとの温度差は解消しきれていないようである。
  • ブウィンディおよび他の国立公園の維持費
    • ウガンダにはブウィンディ以外にも素敵な国立公園がいくつもあるが、一部はアクセスが難しい、治安が悪いなどの理由で観光客があまり訪れていないところがある。
    • その国立公園も維持するためにはブウィンディのパーミット代を高く設定し、他の公園にも還元するということが行われている。

またレンジャーは特に言及してはいなかったが、事件があってから厳重な警備をしているため人件費がかかるというのももちろん理由のひとつだろう。

 

ゴリラトラッキング実践メモ:

  • 熱帯雨林という名の通り、雨が多い。湿気もすごい。レインジャケット、レインパンツ他、防水グッズは必須。特にカメラやPCは気をつけなくてはいけない。一緒になったオランダ人は高級カメラのレンズに露がついてしまい、写真が撮れずに嘆いていた・・・
  • ゴリラパーミットはUWAオフィス(www.uwa.or.ug)で。詳細は「各国旅Tips ウガンダ」参照
  • ブウィンディまでの行き方については「移動情報 南&東アフリカ編」を参照
  • 私たちはブホマのコミュニティキャンプに宿泊した。詳細は 「キャンプ情報 ウガンダ」を参照

 

ゴリラトラッキングを終えて

念願のゴリラたちとの対面。
以前見たドキュメンタリーで見た動物園に住む孤独なゴリラの悲しそうな目が忘れられず、
本当はどんなところで暮らしているのか野生のゴリラというものをこの目で見てみたかった。

期待していた通り、彼らは素敵な目をしていた。思慮深そうな目をしているのもいれば、いたずらっ子の目をしたのもいる。
TVで見たゴリラの目とは 明らかに違った。それはそうだ。こんな美しい緑の森で暮らしているのだから。

ゴリラは大きな黒い体をしているからか、胸を叩いてコミュニケーションするのが威嚇に見えるからか、
いまだに 凶暴な動物だと思っている人もいるようだが、
実態は草しか食べないとてもおとなしい生き物。それは目を見れば明らかだ。

希少なゴリラの住む森は今は治安の不安定な地域。
国立公園内に保護されているとはいえ、そんな状態ではゴリラの暮らしも危うい。

一刻も早く無駄な争いはやめて人にもゴリラにも平和な森を取り戻して欲しい。

ゴリラ写真集はこちら

※ このゴリラトラッキングの記事は月刊ソトコト2006年1月号に掲載されました!

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