第14回 飛騨市古川町沼町内

開催日
2011年12月18日
参加者数:
7名

今年最後のお手入れお助け隊

今回も前回同様、好評だったコラボ企画、お手入れの前後に里山サイクリングを組み込んだ特別プログラムを実施しました。海外(シンガポール)、県外(大阪)から参加してくださった方をサイクリングガイドがご案内しました。当日は数日前から降り始めた雪で飛騨の農村風景も一面白銀の景色となり、いつもとは違う飛騨の雰囲気を味わうことができたのではないでしょうか。

お手入れ先のお宅は、築120年以上経った元庄屋さんの民家で、床の段差などから旧家である様子が伺えます。リフォームされているため梁は見られませんが、床・天井や建具などのお手入れをさせていただきました。

このあたりは昔、清水が出ていて、そこにはたくさんの鯉が住んでいたらしいです。それが、時代の流れから農薬で死んでもうた、と家主さんから伺いました。今も美しいと思う里山の風景ですが、昔の原風景を知る方にとっては色々と胸をよぎる想いもあるかもしれません。

玄関を開け、まず目に飛び込んできたのは美しい千本格子の板戸。歴史のあるお宅にお邪魔できるだけでも貴重な体験ですが、ざしきと呼ばれるお部屋の天井・なげし・柱・障子戸、最後に玄関前を、米ぬかやえごま油を使ってお手入れしていきます。飛騨の民家は、夏は過ごしやすいが冬は寒くてどうしようもならん、と住人の方はおっしゃいます。

大変ありがたいことにお湯をご用意していただき、一同、心だけじゃなく手もほっこりしながらのお手入れです。まずは水拭き。談笑しながら始まったお手入れも、時間が経つごとに真剣さが増し、口数も減っていきます。黙々と柱や床板などを拭くことに集中。手間をかければかけた分、自分の目の前で家が息をし始め、みるみるうちに輝いていくのが見てとれます。家が喜んでくれているように思われ、拭く手にも自然と力が入ります。水拭きの後は、今度は米ぬかで磨きあげます。程良い油を吸って、木が生き生きと甦っていきます。家だって、人間と同じで生きているんだなと改めて思い知らされました。最後は大事な大黒柱などがあれば、くるみの実を使って仕上げます。約3時間、参加された方は休憩をとることも忘れ、手を動かし続けてくれました。お手入れ中、家主さんの息子さん夫婦がお子さんと一緒にやってきましたが、家がピカピカになっていく様子を興味深げにご覧になっていました。最後はみんなでピカピカになった家の様子を眺めながら、満足感と達成感に酔いしれました。特にシンガポールから参加された方にとってはなにもかもが新鮮だったようで、とても楽しい経験になったと喜んでいただけました。

家主さんを囲んでの昼食

お手入れ後は、家主さんの奥様お手製の豚汁を囲んでの昼食タイムです。冷えた体に豚汁は優しく、心から温まりました。しかも今回は、こちらのお宅でとれた白米もご馳走になりました。はさ干しで自然乾燥してある、大変手間暇のかかったお米です。そのままでも充分美味しく、香りもたち、噛むほどに甘みが増し、おかわりした人続出でした。カブや白菜の漬物も大変美味しく漬かっており箸が止まりません。あと、私達が驚いたのは、干し柿を天ぷらにした一品。こちらでは以前から天ぷらにして食べているらしいのですが、私達にとっては未知の一品。これが美味しいこと、美味しいこと!特に女性陣に大好評で、お皿に山盛りで出てきた干し柿の天ぷらは最後にはたった数個残っているだけでした。私達の食べっぷりの良さに感動してか、お持ち帰り用までいただいてしまいました。

この干し柿ですが、こちらのお宅の富士柿の木が実をたくさんつけるのは2年に1回だそうです。今年は600個とれたそうですが、来年はこれが5~6個になるかもとのことでした。この富士柿の美味しさはどうやら近くの山に住む熊にも知れ渡っているようで、熊が夜な夜な食べに来た年もあるそうで、木になっている実全部食べられたそうです。しかもどれが甘くてどれが渋いかもちゃんと分かっているそうで、甘いのだけを選んで食べて行くそうです。割と町中にあるエリアですが、獣害がこんなところまで及んでいるのだと少し驚きました。

奥様から、嫁いできた頃は2代前の祖母が毎日家の拭き仕事をされていたことを伺いました。当時は畑仕事で朝から日が暮れるまで働きづめですので、拭き仕事は毎夜に行われていたそうです。年に数度のお手入れだけで悲鳴をあげていたら、昔の方に笑われてしまいますね。物を大切に扱う精神も学びました。畳一枚にしても、日焼けしないようにきちんと包んで保存したり、至るところに暮らしの知恵だけではなく、物を大切に扱う、見えないものを重んじる精神が今も残っているように思いました。

参加者からのコメント

  • 飛騨の里山の風景と古民家を見て触れることができて貴重な経験となりました。昔ながらのお手入れ方法も知りませんでした。また春になったら遊びにきます。(20代 女性)
  • 里山の風景だけでなく、文化、そして何よりお手入れを通じて日本の田舎で暮らす人達と接することができ、一緒に美味しくご飯を食べれたことは素晴らしい思い出になります。ありがとうございました。(30代 男性)

今年最後のお手入れお助け隊を、こうして皆さんと一緒に出来たこと、スタッフ一同大変嬉しく思います。家主さんにも喜んでいただけました。皆さんと一緒に流した汗と頂いた豚汁は忘れ難く、共に忘れられない1年となりました。皆様のご参加とご協力のおかげです。本当にありがとうございました。スタッフ一同心からお礼申し上げます。

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