第10回 高山市国府町金桶地区

開催日
2011年2月6日
参加者数:
10名

高山市国府町金桶地区でのお助け隊

2009年11月に活動を開始した「飛騨民家のお手入れお助け隊」は、多くの皆様のご理解とご支援をいただき、第10回を迎えることができました。区切りとなる今回は、これまでのお助け隊の活動を振り返り今後のあり方を考え、皆様から意見を聞かせいただき、飛騨の古民家保存について共に考えるよい機会になりました。

お手入れさせていただいた民家は、ひだ山村・民家活性化プロジェクトが2010年後半から高山市国府地区において古民家の実態調査を再開し、調査を進める中で、近年に在来工法で移築された古民家に出会いました。この民家は、本物の材で家を建てたいという強い思いを持っていた家主さんが、十数軒もの古民家物件を探し訪ねた中から購入を決意され、23年前に越中八尾から移築・再生されたものです。木造民家を次世代に継承するために移築・再生の活用を理解するうえで、移築再生された比較的新しい古民家ですがお手入れをさせていただきました。

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今回は交流会で皆さんから意見を聞かせていただくため、午後からお手入れ作業を行い、交流会では家主の奥さんの手料理をいただきながら、参加者から貴重な意見をいただきました。

お手入れ家屋は移築・再生した民家

今回のお手入れお助け隊のお宅は、本物の材で家を建てたいという強いこころざしをお持ちの家主さんが、古民家の移築再生を考えられ、意中の民家を求めて飛騨・北陸の地域を探し訪ね歩かれたそうです。移築に決意された民家は、越中八尾にあった築昭和18年で雪国に耐える建築構造の民家で、この当時は戦時中にあって立派な民家は建ててはいけない決まりがあったそうですが、山奥にこっそりと建てられたそうです。

解体・移築再生には地元大工を使い、在来工法で一年以上かけて建てられました。この頃、わざわざ遠くから古い家を買ってきて建てるということは飛騨ではまれで近所で笑いものになったそうです。

移築再生された民家は、外観から見ると三階建てを思わせるような高さで、どっしりとした構えの間口○間、奥行き○間、雪国に耐えるように建築された建造物で雪降ろしは一度もされたことがないと聞きました。構造には家主さんと棟梁によるこだわりの細工や意匠がみられ、玄関の戸には無双連子窓を施し、戸を開けると正面にはケヤキと思われる無垢の衝立、太い大黒柱に鏡差しと呼ばれる厚鴨居が目に飛び込んできました。二階の吹き抜けには太い梁と継ぎ手の部材が見られ、梁や柱に仕口跡があって移築されたことを物語っています。また、庭には、移築を記念してケヤキが植栽され、母屋の屋根を越える高さに成長し夏の木陰にはぴったり。家主がおっしゃるには、『ケヤキの植栽は景観ばかりでなく、木の葉は夏の日陰に役立ち雨水を保水する。秋は落ち葉なるからといって邪魔者扱いにするのではなく、落ち葉を掃く余裕を大事にしたい』 この心が民家を大切にしていることに通じていると感じました。

お助け隊員の活動

玄関先で、本日の参加者の紹介と家主さんあいさつのあと、作業工程や役割当てでスタツフが元気よく配置にきました。まずは水拭き、冬場の寒いときに水仕事の雑巾がけは辛いが、家主さんの心遣いで、玄関先に薪ストーブがあってお湯が沸かしてあり、感謝!感謝!作業に力が入ります。外の作業では、米ヌカは寒い時期なので、米ヌカのもつ油が出やすくするためにプライパンで炒って温める作業、荏の油は温めて使用すると油が伸びるので、片手鍋で温める作業、クルミはカナヅチで割って掘り出す手作業も、薪ストーブがあったおかげで少なからず暖かい想いで作業がはかどりました。家主さんの心遣いがとてもうれしかったです。

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お助け隊は、いつものように大黒柱、厚鴨居、梁、板戸の水拭きに、何杯もバケツの水は替えては拭き掃除の作業が終わると、仕上げには植物性油の米ヌカと荏の油、特別に大黒柱はクルミで力を込めて磨くので寒さも感じません。

家主さんは、民家に愛着をもっていることから、ダスキンで特に大黒柱や厚鴨居を拭いているとあってその箇所はきれいになっていましたが、普段お手入れができないところへ、高脚立に足場板をわたしてお助け隊が力を込めて磨いた梁や板戸がツヤツヤになったことに参加者一同大満足でした。

お手入れのあとは、家主さんの案内で屋内を見てまわりました。家主さんや棟梁によるこだわりの細工や意匠が細かいところまで行き届いているし、前にあった家の建具、小物なども利用されていました。二階へ通ずる二箇所にある階段や二階にもトイレ設備などがあって快適な生活設計になっています。参加者から『こんな古民家に住みた~い!』の一声が上がりました。

参加者等からの声

会費制による交流会では、作業あとのうまいビールや酒を飲み、家主の奥さんの美味しい手料理をいただきながら、お手入れお助け隊の10回目を迎えた節目として、飛騨山村・民家活性化プロジェクトの活動等の報告や古民家継承の取組みなどについて意見交換等もあり、貴重な参加者等の声がありましたのでご紹介します。

  • 参加の動機などをお尋ねしましたら・・・・・
    • お手入れをしてあげるのではなく、させていただくというスタンスが伝わってきたので興味をもって参加した。実際に人が住んでいて生活感のある民家というものを見てみたかった。人の家の中を見せていただいてお手入れさせてもらうというボランティアは愛知県にはないので是非参加してみたいと思った。
  • 3回目の参加でこの活動について・・・・・
    • 前回の時は新聞で活動を知り参加した。今回は、民家活性化プロジェクトの活動や背景について説明があったので、どうしてお助け隊を始めたのかというのがよく理解できた。参加すると家の造りや意匠を見て大工の勉強にとてもなり、お手入れお助けすることを自分の名刺に書きいれている。
  • 家主さんには本日たいへんお世話になりましたが、受け入れていただく立場から一言ありましたら・・・・

今日こうやって皆さんが来てくれて、お手入れしていただき本当に嬉しいです。家は広いし寒いし掃除が大変なところもあるが、若い人にも自分の家を知ってもらえて幸せだなと感じています。

古民家に住んでいる人の意識はふた通りあると思います。伝統を受け継いでいこうと強い信念を持った人が住んでいる家と、時代の流れに遅れ、改築するのにも遅れたような人の家がある。皆さんが同じ対応をしていると難しいのではないか。民家のことを褒めるという、そういう声をかけて民家の価値を理解していただくことがいいと思いました。

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