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「美ら地球(ちゅらぼし)ジャーナル」 第四号(不定期発行)

地球がいつまでも美しくあってほしいと願いながら、自然を中心に各国を巡る夫婦が発行。
美を表す沖縄の言葉「美ら(ちゅら)」を借りて名付ける。現地からそこでの体験、感動を
つれづれなるままに発信するメルマガ。

発行日: 2004/8/24
発信地: アメリカ合衆国 カリフォルニア州 LA
発行者サイト: 「美ら地球回遊記」 http://www.chura-boshi.com
サイト新着:
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国立公園
【もくじ】
・ 国立公園とは
・ パークレンジャーという存在
・ アメリカ・カナダの国立公園から感じること

みなさんこんにちは。現在私たちはカリフォルニア州ロス・アンジェルスの友人宅までやってきました。アメリカとの別れも近付き、メキシコ以南へ向かうための準備を進めているところです。第四号のテーマは国立公園。この二ヵ月半、カナダ・アメリカの数多くのナショナルパークを訪れてきました。日本でも多くの国立公園や自然地域を訪れていた私たちが感じたこととは・・・。
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■国立公園とは
アンカレジの友人宅を出た私たちの最初の目的地はデナリ国立公園、多くの登山家を魅了するアメリカ大陸最高峰、マッキンリー山を擁するアラスカ州にあるアメリカの国立公園のひとつである。美しい自然とそこに住む動物たち、さらにはその地においてアウトドアアクティビティにトライするのが大好きな私たちは、旅の主たる目的地に各国の国立公園が多く含まれている。

二ヵ月半をかけ、カナダ・アメリカを旅した私たちはカナダにおいて二つ、アメリカにおいて九つのナショナルパークを訪れた。カナダには42の国立公園が、アメリカには54の国立公園と多くの国立レクリエーショナルエリアなどがあり、そこにある山・川・湖・海などの自然とそこに住む様々な動物たちが保護されている。ここでは普段自然と触れ合う時間・環境が少なくなった現代人にそこへ回帰する時間を与えてくれる空間となっている。
また、国立公園内ではトレッキングやマウンテンバイキング、カヌーイングやラフティングなど自然と戯れる数多くのアウトドアアクティビティに挑戦でき、キャンプ場も敷地内に点在し、多くの訪問者がキャンプライフを楽しんでいる。

ユネスコの世界遺産にも指定されているカナディアンロッキー、アメリカのイエローストーン国立公園は世界各国からのビジターが訪れ、歩いていると両国の母国語である英語があまり聞かれないくらいである。よく耳に入ってきたのはスペイン語、フランス語、中国語であった(もちろん会話の内容は理解できないが・・・)。世界初の国立公園であるイエローストーンにおいては年間200万人以上の観光客が訪れるドル箱公園となっている。

両国の国立公園では、指定エリアの入り口にゲートが設置され、そこで入場料を徴収される。クレジットカードの利用も可能である。指定エリアに入ると後はビジターセンターにおいてキャンプ場使用料やバックカントリー許可証等のアクティビティによって必要な費
用を支払うことになる。
また、公園内で必要となる情報はゲートで渡される公園ごとの地図と情報誌、あとはビジターセンターにおいてレンジャーが丁寧に教えてくれる。工事による道路情報や最近クマが出没したエリアはどこか等の様々な情報が必要となるが、だいたいどこの公園に行っても同じ形態となっているので、欲しい情報がどこにあるかと困ることは少ない。

このように情報だけではなく、広大な国立公園を管理する組織がそれぞれの国には存在する。それがカナダの「Parcs Canada(http://parkscanada.pch.gc.ca/index_e.asp)」とアメリカ「National Park Service (以下:NPS)(http://www.nps.gov)」である。
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■パークレンジャー
国立公園の敷地内には揃いの制服を着たパークレンジャーと呼ばれる係員を多く見かける。ビジターセンターにおいての情報提供、公園内の動物の管理・保護、レンジャーツアー(レンジャーがガイドとして公園内を散策するツアー)、子供用のツアー、公園内は警察の管轄外のようで、交通事故や動物の人間の接触事故への対応等、警察機能も重要な役割であるようだ。観光客の目に見える部分だけでもこれだけの役割があるので、調査活動や他の役
割を含めるとかなりの役割と人数のレンジャーが国立公園での活動に従事していると想像できる。そして彼らを管理する組織がNPSなのである(アメリカの国立公園の合計滞在期間が長いので、NPSを例とする)。

NPSウェブサイトによると、NPSのミッションは「損なわれていない自然・文化的資源そのものとNPSシステムが提供する楽しみ・教育・次世代への啓蒙という価値を保存することである」と明記されている。また、その資源保護とアウトドア・レクリエーションの恩恵を最大化するためにパートナーとの協力を進めていくと。

まずこのような存在意義の明確化に感心する。どこの公園を訪れても同じエンブレムをつけた同じ制服を着たレンジャー達は胸を張って自分たちの業務に携わっているという姿勢が伝わってくる。言葉の壁があったとしてもどのような質問にも豊富な情報を丁寧に答えてくれ、訪問客に対する温かいホスピタリティを感じるし、キャンプ場の集会場で行われる様々なトピックの説明を聞いているとそのプレゼンテーション能力の高さに驚く。ビジネスコンサルタントとしてサービス業に従事していた私達もそういったクライアントハンドリングのトレーニングは受けたし、それに対する高い価値観を持っているつもりであるが、それでも彼らのクオリティの高さには感心し、学ぶべきところも多くあった。NPSシステムの中には多くのトレーニングコースが含まれているのではと、ふと考えた。

彼らは公園内のレンジャー居住区に住み、交代制で業務に就いているようだ。ある期間で別の公園へ異動ということもあるようだ。居住区はビジター立ち入り禁止区域なので、そこでの暮らしを垣間見ることはできなかったが、川原で愛犬とノンビリ過ごすレンジャーを見かけたことはあった。

このような重要な役割を担っているレンジャーの募集はサイトやアウトドアショップに置かれたブローシャーなどで行われているが、人気職種で、応募者は多く、非常に高い倍率となっているそうだ。高い志を持った者のみがレンジャーになれるのか。

また、公園内の管理要員としてボランティアの存在も忘れてはならない。車道やトレイルの補修などの管理や多くの業務がボランティアの協力によって支えられているようだ。また、キャンプホストといってキャンプ場の管理人も退職後の老夫婦がボランティアとして
従事しているケースも非常に多い。アメリカではこのように老後の人生をボランティア活動で色づけている方々も多くいるように感じられた。

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■アメリカ・カナダの国立公園から感じること
このように多くの時間を国立公園で過ごしてきたが、数多くのことを私たちは感じた。日本の国立公園についてあまり知らないが、少し環境省のページを訪れて調べたところ、28のエリアが国立公園と指定されているようだ。アメリカのNPSシステムを手本にして整備を進めているとあるが、その現状はまだ似て非なるものと感じられる。一利用者として感じられることは、
・ゴミが多い
・店が多い、景観が整っていない
・アウトドアアクティビティのフィールドが整備されていない
・レンジャーっているのであろうか
が特に挙げられると思う。

ゴミとは、敷地内に落ちているゴミの多さである。野口健氏の提言どおり富士山を中心とした日本の自然地域には非常にゴミが多いと思う。私たちには比較対象がカナダ・アメリカしかないが、それは明らかに言えると思う。こちらではトレッキングに出かけても、皆ランチを取り出し、食べ終わればゴミをカバンに戻す。トレイル上に落ちているゴミは本当に少ない。またバックカントリー以外のアクセスしやすいエリアには非常に多くのゴミ箱が設置されている。捨てて良いところ、ダメなところが明確に分けられているということは、ビジターもうまくゴミと付き合える環境ではないかと思う。

次に店が多い、景観が整っていないという点を挙げたが、アメリカの国立公園エリアには非常に限られた数しか店がない。基本的に必要なものは全て持参しろとのスタンスと考えてよい。また、敷地内の店はログハウスタイプの店舗を持ち、ガソリンスタンドでさえ、通常よりは小さな看板で周りの店舗と同じような外観をしている。それに比して日本は「ビール冷えてます!」「焼きとうもろこし!」などの色とりどりの看板があちらこちらに。もちろん、歴史的な背景などにより、国立公園の指定・管理の方法が異なることは想像できるが、とはいえ訪問者が求める景観という視点を利便性よりプライオリティを置いてもよ
い気がする。また、必要なものは必要なだけ現地で買うという日本のコンビニ文化もゴミの増加の一因と考えても良いのではないか。

アウトドアアクティビティ・フィールドが整備されてないとは、日本は多くの自然区域があるのにそれを活用しきれていないと感じる。国立公園に限らないがMTBトレイルなど皆無に等しい。あるかもしれないが、その情報を得ることが非常に困難だ。ニセコのMTBレンタルショップでMTBトレイルを聞いたら教えてくれなかった経験がある。彼らはMTBツアーを企画しているのにどうやらそれはツアー客用で、タダでは教えられないということらしい。国立公園の敷地なのだから、国民全員にそこを楽しめるトレイルマップを国立公園として配布して欲しいものだ。

最後のレンジャーについても、日本でレンジャーに会った記憶はあまりない。会っているのかもしれないが、その存在に気づいていないのかもしれない。自然環境保護が声高に唱えられる今日この頃、第一線でそこに従事する人々の存在をもっとアピールすることも重要であると考えられる。
これに関しては、最近始動した東京都の「都レンジャー」の活躍に期待する。
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■さいごに
観光立国ニッポン、こんな言葉もあったが、それを実現するにはまだまだ遠い道のりがあると、この点からも感じることができると思う。ただ、後進国ゆえによりよいアプローチを歩むチャンスがあるとも同時に言える。
ただ、私自身、自然環境を観光立国のソースとすることが良いことという問いにまだ答えを持っていない。

私たちは単なる旅人で公正に比較できる立場ではないし、そこまでの情報を有してはいない。ただ、その場を訪れる人として持ちえる情報のみを用いて感じることを徒然と書いているだけで、日本を批判したいというだけの希望ではない。私たちの見たもの・感じたものを元に、読者の皆さんががそれぞれの意見を持ち、次なる一歩は何かと考えるきっかけにでもなればよいと考えている。

2004/8/17 アメリカ、カリフォルニア州L.A.の友人宅にて

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